アメリカの大学に行きたいと思い始めたきっかけの一つは、この天文学者クリフォード・ストールのプレゼンを見たことだ。始めはただその勢いに圧倒されるけど、しばらくするとその根底にある深い温かさを感じられると思う。
アメリカ型のシステムは、確かにさまざまな場所で問題を起こしているが、このようなプレゼンが生まれ、シェアされている事実は、それらの問題を乗り越える可能性を感じさせる。
【日本語訳全文】クリフォード・ストールがいろんなことを話します by 青木靖氏
ストール博士が抱いている懸念は、以下に挙げた二冊のタイトルにも表れている。私たちはインターネットという目新しいものに、つい飛び付いてしまっているけれど、本当に人生を豊かにしてくれるものは他にある。このプレゼンでは、手のひらに章立てをペンで書き、OHPを使い、計算尺を使って、それを訴えている(※ストール博士はコンピュータのエキスパートでもある)。ネットとの距離の取り方を、子どもたちだけでなく私たち大人も、そろそろ変えるべきだろう。
コミュニケーションのメディアが変われば、僕らの思考パターンもそれに影響されて変わる。コンピュータをプログラムする僕らは、コンピュータにプログラムされる存在でもある。
(「インターネットはからっぽの洞窟」p.81より)「コンピュータだと、失敗が許されるわね。あれこれたくさんやってみて、そのなかから一つを選べばいいんだから。でも、フィルムでは、チャンスは一回限り」
「ロマンとかミステリーといったものがないのね、コンピュータだと。デリケートな神経とか職人芸も必要とされないし、実体そのものがないから、カメラマン魂の入れようもない。惚れようがないのよ」
(「インターネットはからっぽの洞窟」p.144より、プロカメラマン、キム・ニブレットの言葉)『インターネットはからっぽの洞窟」の刊行に合わせて来日したクリフは、私が想像したとおりの人だった。私の家族と一緒に食事をした日は、ちょうど息子がSATを受験した日で、そのせいか少しふてていた。クリフはそんな息子に、「人生には後になってみないと意味や価値がわからないけど、その時にしなければいけないことがたくさんあるんだ。どんな小さいことでも、ちゃんと丁寧にすることが大切だよ」と話しかけていた。短い食事のあいだに、そんなことを二、三回語りかけてくれたのが印象に残っている。
(「コンピュータが子供たちをダメにする」p.260 訳者あとがきより)




コメント
Technology Entertainment Design、TEDに初めてアクセスして、2,3動画を視聴しました。
クリフォード・ストール、この人に比べたら「わたし、フツー」と思えてほっとした。この勢い、凄い!話術が凄い。問題の飛躍と間の取り方が上手い。聴き手の引きつけ方が上手い。サンデルの聴衆参加させ方とは違うけれど、掌のメモ(カンニングを思い出したけれど)など小道具を使った、化学・物理学もちろん天文学(星を見るのは大好きだけど、天文学的には見れない。文学的にしか)に弱いわたしにも分かる例示が凄い。そして最後、1971年、ヴィエトナム戦争下、大学構内の鐘楼に逃げ込んでからの哲学的思考が素晴らしい。
8月2日ワシントン・ポストが傘下のNesweekを身売りした記事を読んだ。そしてまた昔話。Walter Lippmannという20世紀最大のジャーナリストの一人の壮絶な、マッカーシズムとヴィエトナム戦争への批判、時のジョンソン大統領との徹底的論争。とうとう1967年、彼は断筆したが、Newyork Herald Tribune紙Today and Tomorrowというコーナーで論陣を組んでいた。その詳細は、まだ学部時代の英語力では読みこなせなったが、Newsweekに掲載されてLippmannの記事はよく思い出せる。Lippmannは早くからヴィエトナム戦争が泥沼になることを警告していた。アジア大陸には入るべきではないこと。オーストラリアをフロントに留めることを主張していた。
アフガニスタンがまたその二の舞になるのだろうか。多くの命が喪われている。真実へと、寛容へと、喪われた命の声が鐘の音を響かせている。その鐘の音を世界中の人が今耳を澄まして聞くべきであろう。広島と長崎の鐘へ、ルース駐日米大使が一歩近づいたのだから。